【三重・鳥羽市】神の国で感じる癒しの時間 ─ 旅の匂い

プロフィール

歴史大好き、東京タクドラ:Ricca です。東京を拠点に日々お客様をお乗せしながらも、空いた時間を使って全国を歩き、古代から近代までの歴史や街並みに触れることをライフワークにしています。旅の合間に「匂い」や「空気感」を感じ取るのが得意で、地元の人の暮らしや文化に思いを馳せながら記事を書いています。

場所・アクセス

今回訪れたのは三重県中部。名古屋や大阪からも鉄道でアクセスしやすく、近鉄やJRを利用すれば数時間で到着できます。観光地化され過ぎず、落ち着いた空気が漂う地域です。

見どころ

三重県は、古代から伊勢神宮を中心に信仰の拠点として栄えた地域です。江戸時代には東海道の要衝として人や物資が行き交い、現代まで独自の文化を守り続けています。街を歩くと、木造の古い建物や昔ながらの町並みが点在しており、東京の喧騒とは異なるゆったりとした空気が漂います。観光地的な華やかさよりも、歴史の「余白」を感じられるのが魅力です。

Riccaコラム:三重の時間

誕生日の恒例行事 ― ひとり旅へ
 毎年11月、私の誕生日には「ひとり旅」をすることを恒例としています。仕事の疲れを癒し、心を整えるため。そして何より、自分自身の節目を新しい土地で迎えることで、「今を生きている」実感を噛みしめたいからです。
 これまで長崎県や高知県など、いくつかの候補地を挙げては計画を立ててきました。しかし今年は予算の都合もあり、最終的に三重県を選びました。とはいえ単なる妥協ではありません。伊勢の地はこれまで訪れたことがなく、歴史的にも私にとって大きな意味を持つ土地でした。まさに、今年の旅にふさわしい最適の目的地だったのです。

三重県への道のり
 東京から三重へ向かうには、名古屋を経由するのが一般的です。新幹線で名古屋へ、そこから快速列車で伊勢へ向かうルート。私の好きな滋賀県彦根市へ行く時と同じ経路であり、時間や費用を考えても効率的。旅慣れた感覚で、概算の予算はすぐに思い浮かびました。

旅と仕事の関係
 ここで少し自己紹介をさせてください。私は東京でタクシードライバーとして働いています。この仕事は、多くの人と出会い、街を走りながら日常を支える誇りある仕事です。ただし、その勤務体系は非常に特殊で、1度の拘束時間は22時間に及びます。長時間の労働に加え、十分な休養が取れないことも多く、身体は常に疲労と隣り合わせです。
 だからこそ、旅は私にとって心身を回復させる大切な機会。労働の厳しさを知っているからこそ、「健康であることの有り難さ」「今を大切に生きること」の価値を以前よりも強く感じるようになりました。好きなことを、できる限り、できるうちにやる。今回の旅も、そんな思いを込めた誕生日のご褒美でした。

旅の目的とルート
 今回の旅の最大の目的は、大黒屋光太夫ゆかりの地を訪ねることです。光太夫は江戸時代に漂流し、ロシアで数奇な運命をたどった人物。私は彼の生き方に強い影響を受けてきました。そこで今回は「伊勢から白子(鈴鹿市)」へと巡る計画を立てました。
 もちろん三重県には他にも魅力的な土地があります。東紀州の熊野や忍者の里・伊賀も関心を寄せていましたが、2泊3日の限られた旅では欲張れません。そこで、今回は「鳥羽 → 二見浦 → 伊勢神宮 → 鈴鹿 → 白子」というルートに絞りました。思い入れのある町を、しっかり歩いて確かめるためです。

鳥羽という町との出会い
 最初の目的地に選んだのは鳥羽市でした。正直に言えば、鳥羽に特別な思い入れはほとんどありませんでした。教科書やテスト問題で「御木本幸吉の真珠養殖の成功」を知った程度の記憶しかなく、旅行先としては強い印象がなかったのです。
 ただ、魚介類、とりわけ牡蠣が大好きな私にとって、鳥羽は牡蠣の名産地であることが魅力でした。誕生日に新鮮な牡蠣を味わうことは、最高の贅沢。加えて、御木本幸吉が「世界で初めて真珠の養殖に成功した地」という事実も、歴史好きの私にとって心をくすぐるものでした。
 そのため鳥羽は、いわば「準備運動」のような気持ちで訪れるつもりでした。伊勢神宮や光太夫ゆかりの白子に向かう前の小さな寄り道。しかし、その印象は良い意味で裏切られることになります。

御木本幸吉の偉業
 御木本幸吉の名前を聞いたことがある方は多いでしょう。彼は明治時代、幾多の失敗を経て世界で初めて真珠養殖に成功しました。天然真珠と変わらない品質の養殖真珠は、瞬く間に世界に広まり、日本の誇りとなります。
 私は小中学生の頃、この偉業を教科書で知り、「世界を相手に挑み続けた人が日本にいたのか」と強く印象に残りました。大人になった今、改めて彼の故郷である鳥羽を訪れたことで、その志の大きさに思いを馳せることができました。歴史は単なる年号の羅列ではなく、人の努力と情熱の積み重ねであることを再認識させられます。

鳥羽の魅力と誕生日の味覚
 そして何より、鳥羽の魅力は海の幸にあります。新鮮な牡蠣を誕生日に味わう喜びは、言葉に尽くせません。口に含んだ瞬間、濃厚な旨味が広がり、旅の疲れを一瞬で吹き飛ばしてくれました。
 「疲れを癒し、心を整える」ことを目的にしていた今回の旅。その第一歩を、鳥羽で最高の牡蠣とともに迎えられたことは、何よりの幸せでした。

思いがけない楽しさ
 当初は軽い気持ちで訪れた鳥羽。しかし、御木本幸吉の足跡に触れ、誕生日の牡蠣を堪能し、想像以上に心に残る時間となりました。「思い入れのなかった町が、これほど楽しいとは」。旅の醍醐味は、予想を超えた出会いにあるのかもしれません。
 こうして私の三重県の旅は、鳥羽から始まりました。

次回予告
 次回は、二見浦から伊勢神宮への道のりを綴ります。古代から人々が歩んできた「お伊勢参り」の道、その歴史と風景を、私自身の旅と重ねながらご紹介したいと思います。

アドバイス

三重の街歩きは「予定を詰めすぎない」ことがコツです。公式観光スポットも魅力的ですが、むしろ路地や商店街をのんびり歩くと、その土地の真価が見えてきます。昼下がりの喫茶店や地元スーパーに立ち寄るのもおすすめです。公共交通が限られるエリアもあるので、移動は事前に調べておくと安心です。

読者コメント

この記事を読んで「自分も歩いてみたい」と思った方は、ぜひコメント欄で感想をシェアしてください。実際に行った方の体験談も歓迎します。次回の記事作りの参考にさせていただきます。

まとめ

三重県は、先入観とは違った町の姿を体感できる場所でした。観光地的な華やかさではなく、日常に根差した歴史や暮らしが残るのが大きな魅力です。歩くだけで時間がゆるみ、自分自身を見直すきっかけにもなるはずです。次回は「夜の町」を歩いてみる予定です。ぜひ続けて読んでいただければ嬉しいです。
旅①はこちら

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