プロフィール
歴史大好き、東京タクドラ:Riccaです。普段は東京でタクシーを走らせながら、お客様との会話から旅のヒントを得ています。今回は「旭川」という地名に惹かれて、極寒の北海道へ向かいました。
場所・アクセス
旭川市は北海道のほぼ中央に位置し、札幌から特急列車で約1時間半。東京からは直行便で旭川空港へ行くことも可能です。冬季は欠航もあるため、新千歳空港からの移動ルートも検討しておくと安心です。白銀の景色を眺めながら向かう鉄道旅も魅力のひとつです。
見どころ
旭川といえば「極寒の街」として知られ、1月の平均最低気温はマイナス13度。過去にはマイナス41度を記録したこともあります。
観光の目玉は動物たちの冬の姿が見られる旭山動物園、そして雪に覆われた街並みそのものです。
東京の冬との違いは、空気の乾きと雪質の軽さ。サラサラの雪を踏みしめながら歩くと、関東の重たい雪とはまるで別世界に感じられます。
Riccaコラム:アイヌ語と松浦武四郎の夢
出会いと旅立ちのきっかけ
タクシー乗務をしていると、思わぬご縁が旅の扉を開いてくれることがあります。ある日、車内で出会ったのは旭川出身のお客様。
「旭川はね、冬になると本当に寒いんですよ。マイナス二十度なんて当たり前。雪の質もサラサラで、ほかの地域とは違います」
その言葉に私はすっかり魅了されてしまいました。
関東育ちの私にとって、冬の寒さといえばせいぜい氷点下数度。マイナス二十度の世界など想像すらできません。その未知の世界に心惹かれ、「よし、次の旅は旭川だ」と決意したのです。
極寒の旭川を目指して
旭川市は北海道のほぼ中央に位置し、人口はおよそ32万人。道内第二の都市でありながら、冬の厳しさでは札幌以上に知られています。気象データによれば、1月の平均最低気温はマイナス13度前後、過去にはマイナス41度を記録したこともあるとか。
東京から向かう場合、便利なのは直行便が就航する旭川空港です。しかし冬季は欠航も少なくなく、多くの旅行者は新千歳空港に降り立ち、そこから鉄道やバスで移動します。札幌から旭川までは特急列車でおよそ1時間半。車窓に広がる雪原は、まさに白銀の世界そのものです。
旅支度も特別です。ダウンジャケットはもちろん、耳まで覆う帽子、厚手の手袋、防寒靴。地元の人からは「寒さ対策を怠ると旅どころではなくなりますよ」と忠告を受けました。寒さを甘く見てはいけない――それもまた、旭川が持つ旅の魅力なのかもしれません。
地名に息づくアイヌ語
北海道を旅すると、ふとした瞬間に耳慣れない響きの地名に出会います。これらの多くは、かつてこの地に暮らしたアイヌ民族の言葉に由来しています。
たとえば札幌。もとはアイヌ語の「サト・ポロペッ」、つまり「乾いた大きな川」を意味するといわれています。現在の豊平川を指しているのでしょう。温泉地として名高い登別は「ヌプルペツ」、濃い色をした川を意味します。室蘭は「モ・ルエラニ」、小さな下り道のあるところ。富良野は「フラヌイ」、香りのよい火の神の場所を示しています。
これらの響きは単なる地名以上の意味を持ちます。大地の姿や自然との関わりをそのまま言葉に封じ込めた、先住の人々の知恵と感性がそこにあるのです。旅先で地名の由来を調べてみると、風景の見え方が一層深まるのを感じます。
「北海道」という名を授けた男
ところで「北海道」という名前そのものも、もともとアイヌ語に深い縁があります。名付け親は松浦武四郎(1818-1888)。幕末から明治にかけて蝦夷地を踏査し、その自然と文化を記録した探検家です。
武四郎は幕府に対し、この地を新たに国土として位置づける必要を説きました。その際、彼は六つの候補名を提示したといいます。北加伊道、海北道、海島道、東北道、千島道、日高道。その中から政府が選んだのが「北加伊道」でした。のちに表記を簡略化し、現在の「北海道」となったのです。
「加伊(カイ)」とは、アイヌの人々自身を指す言葉です。また一説には「カイ」は「カムイ(神)」に通じ、自然への畏敬を示すとも言われます。つまり北海道という名には、北の大地に暮らす人々と自然への敬意が込められているのです。
私たちが何気なく口にする「北海道」という言葉の裏には、武四郎の思いと、アイヌ語の響きが息づいている――そう知ると、この地に立つ意味もまた深みを増してきます。
旅の学びと次回への期待
こうして旭川を目指す旅は、単なる観光以上のものになっていきます。雪に覆われた街並みを歩きながら、地名の由来や歴史をたどることで、土地の奥深さを感じ取ることができるのです。
タクシーのお客様との何気ない会話から始まったこの旅。そこには「言葉」が導く不思議な縁がありました。旭川という響きもまた、アイヌ語に由来するといいます。次回はその背景に迫り、この街の物語をさらに掘り下げてみたいと思います。
「名前に込められた想いを知ることは、旅を豊かにする」――その実感を胸に、私は再び北の大地へと歩みを進めます。
アドバイス
冬の旭川を旅するなら、防寒対策が第一です。耳まで覆う帽子、厚手の手袋、防寒靴は必須。寒さを甘く見ると観光どころではなくなります。また、移動中は列車やバスの時刻変更も多いので、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
読者コメント
「旭川のマイナス20度の世界を体験してみたい!」「アイヌ語由来の地名にそんな意味があったなんて知りませんでした。」
まとめ
旭川の旅は、極寒の自然と共に、地名や歴史の奥行きを教えてくれます。先入観とは違う街の表情を知ることができました。次回は旭川の夜の町歩きをテーマにお届けする予定です。どうぞお楽しみに。
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