【大阪・西成あいりん地区】社会問題×文学 ─ 東京タクドラが出会った西成の縁

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プロフィール

歴史大好き、東京タクドラのRiccaです。普段は東京でタクシードライバーをしながら、全国の町を歩いて歴史や文化を肌で感じています。社会問題や文学を手がかりに「その土地に息づく人々の姿」を探す旅を続けています。

※詳細プロフィールはサイドバーのCocoon標準プロフィールウィジェットに掲載しています。

場所・アクセス

今回歩いたのは、大阪市西成区「あいりん地区(旧・釜ヶ崎)」です。大阪メトロ御堂筋線・動物園前駅やJR新今宮駅からすぐ近くに位置し、交通アクセスは非常に便利です。新世界や天王寺からも徒歩圏内で、観光地と生活の町が隣り合っています。

見どころ

あいりん地区(旧・釜ヶ崎)は、日本最大の寄せ場として知られ、日雇い労働者の町として発展してきました。その背景には「部落差別」や都市の周縁に追いやられた歴史があります。実際に歩くと、町に独特の匂いや雑多な雰囲気が漂い、東京の山谷や寿町とも似て非なる印象を受けます。恐怖や先入観を抱く人も少なくありませんが、現実は人々の生活が息づく温かな場でもあります。

Riccaコラム:文学と社会問題に導かれて

かつて、私は無職でお金がない頃、西成に泊まろうと考えていた。
青春18きっぷを握りしめ、行き先を定めず関西へ向かう日々。宿代の安さを理由に「次は西成にしよう」と思ったが、関西の友人知人は口を揃えて止めにかかった。
「あんなトコに行くなんてとんでもない」「女性ひとりで行けば、危ない目に遭う」――そんな言葉を浴び、結局その時は足を踏み入れられなかった。

だが年月を経て、今の私は会社員である。経済的に切羽詰まっているわけではない。それでも、あえて西成に宿をとることにした。
理由はただ一つ。タクシードライバーとして働いていた時期に、同和地区に縁のあるお客さんたちと出会い、深い話を聞く機会を得たからだ。

私の好きな作家に、灰谷健次郎がいる。児童文学の名手でありながら、『兎の目』『笑いの影』などで部落差別を描き、その一部は発売禁止にすらなった。
『兎の目』に登場する「ハエ博士」の少年は、同和地区に生まれながらも科学的才能を発揮する。しかしその才能が花開いたのは、彼が「差別の町」で暮らしたからであり、別の町に生まれていたら別の研究をしていただろう――そう語る大人の言葉が、私は忘れられない。

タクシードライバー時代に出会った三人の客が、私の意識を決定的に変えた。
一人目は、同和問題を扱う団体の役員。灰谷の話をしたとき、名刺を差し出されて初めて、その人の立場を知った。
二人目は、大企業で働く関西出身者。大阪・同和地区の出身だと明かし、「差別はあったかもしれないが、今は東京で家族を持ち、それなりの地位に就いている」と穏やかに語った。
三人目は、東京の地理に詳しく、革細工や屠殺場、刑場の歴史を教えてくれた。穢多・非人という言葉の背景、都市の暗部として封じ込められた歴史を。

この三人と出会わなければ、私は再び西成を訪れようと思わなかっただろう。
数年前は貧しさゆえに選ぼうとした西成。だが今は「必然」として訪れる。文学や証言と自分の目で確かめるために――。

アドバイス

西成を訪れる際は、恐怖や先入観にとらわれず「町を歩き、人の声を聴く」という気持ちを大切にしてください。治安面で不安を感じる方は、日中の散策がおすすめです。宿泊もリーズナブルですが、女性一人旅なら宿のレビューをよく確認すると安心です。

読者コメント

この記事を読んで「あいりん地区」に興味を持った方、実際に歩いた体験がある方は、ぜひコメントで教えてください。皆さんの声が、次の旅のヒントになります。

まとめ

先入観とは違った西成の姿を体感できました。町には歴史の影とともに、今を生きる人々の生活がありました。
次回は夜の町を歩き、昼とは違う顔を見てみたいと思います。→ 旅③はこちら

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